我々はリコンビナント近交(RI)系マウスを用いて気管支喘息の遺伝要因のゲノム的解析を行ってきた。研究で用いるSMXAリコンビナント近交(SMXA-RI)系マウスは、SM/J系とA/J系マウスの両系間F2から交配を繰り返した30系統からなるRI系であり、既にSM/J系とA/J系間で全染色体上にわたる多型を示す約400遺伝子座についてStrain Distribution Patterns(SDP)が確定されている。多因子遺伝性疾患を解析する実験系としてSMXA-RI系マウスを用いる方法は理想的なものと思われる。 気管支喘息は疾患自体が均一ではなく多様な病態の集合であると考えられるため、発症に関与している機序を即時型喘息反応(1.抗原特異的IgE値)、遅延型喘息反応(2.好酸球の気道への集積)、また気道過敏性などのように各病態に分けて解析する。本年度は即時型および遅延型喘息反応に関与する遺伝子のQTL解析を行った。実際には(1)SM/J系とA/J系マウスおよび30系統のSMXA-RI系マウスを用いてアラムとともに卵白アルブミン(OVA)により感作する。2度目の感作7日後により3日間OVAを吸入にて暴露し、感作前と最後の吸入日に採血し血清分離し、OVA特異的なIgE抗体をELISA法にて測定した。(2)上記と同様の処置後のマウスでEDTA加PBSを用いて気管支肺胞洗浄しサイトスピン後に染色し細胞分画を調べ好酸球の気道への集積度合いを測定した。以上の方法にて各SMXA-RI系マウスの各表現型を確認した。、30系統の約400遺伝子座のSDP情報を各系統ごとにすべてMAPMANAGERに入力し、さらに各系統の表現型も即時型、遅延型反応ごとに入力しQTL解析を行った。この方法により各系統の全染色体にわたる解析ができ、どの染色体のどこの部位に疾患感受性の遺伝子座があるかを同定した。即時型に関しては第2及び第15染色体上に各1個、また遅延型は第16染色体上に1個の有意なQTLを示す原因遺伝子座を同定した。今後未解析のRI系マウスの解析とさらなる遺伝子マーカーを用いて第2及び15染色体上の原因遺伝子座の領域を絞り込んで行くとともに、原因遺伝子の同定を試みる。
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