研究概要 |
複合糖質の糖鎖の多様性は、複雑な生命現象に深く関与している。近年の糖鎖合成酵素遺伝子群の単離とその操作実験は、具体的な生命過程における個々の糖鎖構造の意義を明らかにしつつある。本研究では、(1)糖鎖合成酵素遺伝子の多型性の同定と変異遺伝子の機能およびその疾患との関連の解析、(2)各種癌と正常組織における糖鎖合成酵素遺伝子の発現プロファイルのDNAチップによる検討とデータベースの作成により、糖鎖と発癌、病型、予後、薬剤感受性等との関連を明らかにする。(1)糖鎖合成酵素遺伝子の多型性解析については次のような結果を得た。単離したα1,4-ガラクトース転移酵素はGb3/CD77および血液型P^k合成酵素であり、大腸菌O157の毒素受容体である。p型(P^k-)における本遺伝子の変異を検討した結果、日本人でP251L、W261stop、スエーデン人でM183K、G187Dと、両国間で異なった変異が同定され、変異遺伝子の機能消失が確認された。missense変異部位は異種間で保存されていた。 β1,4-galactosyltransferase VII(XGal-T1)はC.エレガンスsqv3のヒトホモローグであるが、Ehlers-Danlos症候群早老型患者の遺伝子変異を検討し、2種の機能喪失(または低下)変異を同定した。 (2)糖鎖合成酵素遺伝子の発現プロファイルについては、糖転移酵素遺伝子チップの作成の為、約120種のヒト糖鎖合成酵素遺伝子の同定とクローン収集および塩基配列の確認を進めてきた。また、PCR産物のスポッテイングと検出法などの基礎的検討を進めている。
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