NIDDMの発症機構の解明、治療法の開発のために、NIDDM発症に関与する原因遺伝子を同定していく必要がある。ヒトNIDDMのモデル動物であるOLETFラットにおけるNIDDMの発症に対して主効果およびエピスタシス効果をもつ原因遺伝子を、コンジェニックおよびサブコンジェニック系統を用いてファインマッピングし、同定していくことを目的とする。主効果をもつNIDDM原因遺伝子については、第1、5、7、8、9、11、12、14、16および17番染色体上に14個の遺伝子座(Nidd1〜14/of)をマッピングした。また、エピスタシス効果をもつ9個のNIDDM原因遺伝子座を染色体上にマッピングした。2つの染色体領域は、主効果とエピスタシス効果の両方に重複して連鎖を示すことから、21個のQTLの存在が明らかとなった。今回マップされたNIDDM原因遺伝子のうち、11個は空腹時血糖値に、12個は食後血糖値に、1個はβ細胞数・機能にそして1個はインスリン値に効果を示し、これらの遺伝子は異なるNIDDM発症機構に関与することが示唆された。第7、14番染色体上に位置するNidd1、2、10/of遺伝子座については、これらのQTLのゲノム領域である約13、22、19cMのみがOLETFラットのゲノム由来で残りのバックグランドゲノムはF344ラット由来であるコンジェニック系統をスピードコンジェニック法に従い作製した。これらの系統について、予備的に空腹時血糖値、食後血糖値およびβ細胞の増殖能を検討したところ、この3つのQTLのNIDDMに対する効果の存在が示唆された。残りの11個のNidd/of遺伝子座についてはN4の段階以上までコンジェニック作成が進んだ。さらにNidd/of遺伝子の候補遺伝子を検索することにより第9番染色体上のNidd8/of領域にヒトNIDDM1であるCAPN10遺伝子が存在すると判明した。
|