研究概要 |
我々はY染色体の構造の多様性と男性の表現型の関連に興味を抱いてきた。特に日本人の男性のY染色体が3種類のDNA多型を用いることで4種類のハプロタイプに分類できることを明かにし,精子数を含むいくつかの表現型がこれらのハプロタイプと関連することを示してきた。本研究では,現在までの成果を踏まえ,日本人集団でY染色体上のSNPや他のDNAマーカーを収集し,Y染色体上に想定される肥満・糖尿病関連遺伝子または遺伝子群を同定することを目的としている。 今年度はY染色体上のSNPsを収集することに重点を置いた。ハプロタイプIからIVのY染色体を持つ4人分の男性ゲノムDNAを混合したものを7セット準備し,Y染色体上の合計100種類のSTSについてPCR-DHPLC解析を行った。その結果,日本人男性Y染色体全体の50%近くを占めるハプロタイプをさらにIα,Iβの2種類に分類可能となった。IαおよびIβがハプロタイプIに占める頻度はおのおの約50%程度であった。またUSP9Y遺伝子のArg211Cys多型がハプロタイプIIに特異的に認められた。 今回の研究で日本人Y染色体上に2種類の新規SNP候補が見いだされた。しかしながら,いずれも複数コピーをなして存在するY染色体領域に存在することが予想され,塩基配列の決定は困難であった。 一方で,新たにハプロタイプIが2種類に分類できたことで,より詳細に男性の表現型とY染色体ハプロタイプとの関連が解析できるようになり,現在解析を進行中である。USP9Yは脱ユビキチン化酵素であり,タンパク質代謝に重要な役割を担っていると予想される。Arg211Cys多型の意義について発現実験等で検討する必要がある。我々のSTSマーカーは200bp以下のものが多く,これがSTSの数に比して,SNPsが少なかった原因の一つと考えた。
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