研究概要 |
<背景と目的>本研究の目的は、我々が開発した遺伝子多型検出システム(DNAプール)PLACE-SSCP法を応用することにより、膠原病・アレルギー疾患の疾患関連遺伝子を効率よく大規模に探索し、さらに機能解析へと発展させることにある。従来、多数の候補遺伝子について単一塩基多型(SNP)を同定と関連解析には莫大な労力が必要であった。我々の新技術は1%前後の誤差でアレル頻度を決定できかつ同時に数百検体を検討できることから、迅速、正確かつ大規模なSNP同定、関連解析が可能となった。<検討結果>本年度は対象疾患を全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性関節リウマチ(RA)として、それぞれ150名あまりの患者DNA、RNAを採取した。候補遺伝子としてアポトーシス関連分子、TNF/TNF受容体ファミリー分子、B細胞シグナル伝達分子、補体、癌遺伝子をターゲットに解析を進めた。陽性の結果が得られた、TNF/TNF受容体ファミリーのAPRILとtypeII TNF受容体(TNF-RII)、アポトーシス関連分子のcaspase-8について結果を提示する。1)APRIL:まずAPRILのゲノムの構造を決定し、6個のexonからなることを初めて明らかにした。さらにSSCP法にて、G67B,N96Sの多型を認めた。RA患者において健常人より有意に67Gの頻度が高く、APRILとRAの関連が推測された。2)TNF-RII:196Rの頻度がSLE患者では有意に高い結果をえた。さらに機能解析をおこないwild-typeの196Mに比べて、196RではTNF刺激によるcytotoxicityならびにIL-6産生が亢進することを明らかにした。3)caspase-8:SNPを同定する過程でdeath domainを欠失したcaspase-8のalternative splicing product(caspase-8L)を見いだした。この新規の分子はcaspase-8によるapoptosisを抑制する。さらにSLE患者PBLでは有意にcaspase-8Lが減少していた。<考察>関連解析により複数の疾患候補遺伝子を見いだした。それぞれの機能解析をおこなっており、病因への関与をさらに明らかにできると考える。
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