薬効、副作用の遺伝的背景を把握して、遺伝子多型に基ずく、個々人に最適化されたテーラーメード治療の実現が期待されるが、ようやく始まったばかりである。一方、薬剤の解毒酵素系の遺伝子多型が薬剤への応答性と副作用に重大な影響を持つと考えられている。しかしながら、解毒抱合体の生体外への排出機構が薬剤の体内動態にさらに大きく関与することが明らかにされはじめ、この機構を解毒の第三相反応とする概念が定着しつつある。我々は、ヒトcMOAT/MRP2遺伝子を単離し、遺伝性疾患のDubin-Johnson症候群の責任遺伝子であることを遺伝学的に証明することによって、cMOAT/MRP2蛋白質が第三相解毒系異物排出ポンプの実体であることを明らかにした。一方、ESTデータベースによれば、さらに70の機能未知のABCトランスポーター遺伝子が存在する。このような背景から本研究は、ゲノムワイドの遺伝子多型アプローチを補足、検証するために、第三相解毒系を担うABCトランスポーター遺伝子群をモデル系として、遺伝子多型に基ずいた薬効、副作用の予測系の構築を目指す。平成12年度には、【1】喘息患者に対するロイコトリエン阻害剤、および小児白血病患者に対する抗がん剤の薬効、副作用データおよび末梢血検体の収集を、患者の同意を得て開始し、【2】ABCトランスポーターの基質薬剤データベースを作成するために、MDR1、MRP1、MRP2およびMRP3遺伝子の導入細胞を用いて、蛍光モデル基質の輸送に対する阻害活性を指標にする基質スクリーニング系構築の予備実験を終了した。
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