(1)心筋細胞にはエンドセリン、エピネフリン、アンギオテンシンおよびカルジオトロフィンなど複数の肥大誘導因子が働くが、これら液性因子がどの様な細胞内シグナルを惹起するのかは明かにされていない。我々はラット培養心筋細胞を用いてこれらの液性因子によってどの様な細胞内系路が共通に、また各因子特異的に活性化されるかをDNAチップによる解析で検討した。その結果カルジオトロフィンは他の三因子とは極めて異なるセットの遺伝子発現を誘導することがわかり、また細胞死に関する制御もそれぞれの因子が特異的な系路を介していることが明らかになった。 (2)食塩負荷により高血圧、心肥大、および心不全を比較的短期間の内に経過する遺伝性食塩感受性ラットDahl ratを用い、各ステージにおける心筋細胞の変化をGeneChipシステムを用いて解析した。その結果高血圧発症時、および心機能低下時に特異的に発現上昇・低下する遺伝子群が明らかになった。 (3)自治医科大学は、卒業生が本邦の極めて広い地域に渡って実際の医療に従事し、大学を中心としたネットワークを形成しているという特色を有している。そのため本学は全国より様々なヒト検体を収集し、かつこれらを食塩摂取量、薬剤効果など様々な患者プロファイルの観点からグルーピング可能である。そこで本年度は全国よりの血液サンプリングのシステム構築を行い、来年度より家族性高血圧症に関与するSNPの同定を目指す。
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