研究概要 |
ヒトゲノム2次元電気泳動法により各種癌細胞に特異的なDNA構造や遺伝子構造を解明するには従来法では多くの時間と費用と労力を必要とした.そこで,ヒトゲノムプロジェクトの成果を踏まえて仮想ゲノム2次元電気泳動法を開発し簡便にDNA変化を同定することを目指して,既に全塩基配列が決定されている大腸菌ゲノムを利用してこの様なアプローチが可能かどうかを証明した.「方法」既に全塩基配列が決定されている大腸菌よりDNAを抽出し,制限酵素により断片化したのち断端部をラジオアイソトープでラベルし第1次元目の電気泳動を行い,さらに第2番目の制限酵素を作用させ第2次元目の電気泳動を施行した.それぞれのスポットについて塩基配列を決定するためにはスポットを切り出しベクターに組み入れ大腸菌にてDNAを増幅して全塩基配列を決定した.仮想ゲノム2次元電気泳動法は,分子量Mの対数と相対移動度mとの関係が線形関係(M)=a-bMにあることからコンピューターを用いて計算し,プロフィールを得た.上記仮想および実体2次元電気泳動のプロフィール比較し同一スポットと考えられる3スポットについてその塩基配列を検討した.制限酵素の組合せは2種類について仮想および実体2次元電気泳動法を施行し比較検討した.「結果」仮想ゲノム2次元電気泳動法にても実体2次元電気泳動法とほぼ同様のプロフィールが得られた.しかも,制限酵素の組合せを変化させるとゲノム2次元電気泳動プロフィールは全く異なっていたが,特定の制限酵素組合せにより得られた仮想および実体ゲノム2次元電気泳動プロフィールは一致していた.仮想および実体ゲノム2次元電気泳動プロフィールで同一と考えられたスポット3個について塩基配列を決定し比較したところ3個とも100%と一致した.「結語」仮想ゲノム2次元電気泳動法は新しい疾患関連遺伝子を同定するのに有用な方法である可能性が示された.
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