我々はヒト21番染色体上に位置する多くの疾患のうち、成長障害、特有な顔つき、先天性心臓病などの多彩な症状を示すダウン症候群の原因解明を目指して研究を行っている。ダウン症は21番染色体のトリソミーが原因で発症する先天性疾病であり、早期診断や治療法の確立が望まれている。我々は、既に21番染色体シークエンシングプロジェクト遂行過程において、約1.5Mbのダウン症必須領域のヒトゲノム塩基配列を世界に先駆けて決定し、本領域から4個の新規遺伝子を同定した。しかしながら、本領域に存在する遺伝子を全て同定したかどうかは明らかではなく、計算機による予測に限界があると考えられる。 そこで我々は、本領域に存在する全遺伝子を同定するために、「ゲノム中の機能的に重要な領域は進化的に保存されている」という原理により他生物ゲノム(マウスなど)との比較構造解析をすることが有効な手段であると考えている。 本年度においてマウス本領域をカバーしたマウスBAC/PACコンティグ(11クローンからなるコンティグをライブラリーよりスクリーニングした)を作製し、ショットガン法及びネスティドデレーション法を用いて現在までに、約1.3Mbの連続した高精度ゲノム配列を決定した。現在、当該領域のヒトーマウスゲノム配列の比較解析により、両種において高度に保存されている配列領域の抽出を行っている。さらにコンピューターを用いて遺伝子予測等の解析も進めている。
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