研究概要 |
内皮細胞に発現しているスカベンジャー受容体群の構造と機能を解明するための検討を行った。1)私達が構造と機能を検討してきたSREC-1の受容体活性に対して中和活性を持つモノクローナル抗体を用いた解析から内皮細胞にはSREC-1とは異なる受容体が存在することが示唆された。そこで発現クローニングの手法により臍帯内皮細胞cDNAライブラリーより受容体cDNAを単離した。その1つはHDLの受容体として知られているCLA-1/SR-BIであった。内皮細胞の受容体活性はHDLによって阻害されないことからCLA-1も主要な受容体とは考えられなかった。もう1つの受容体cDNAは2571アミノ酸からなる新規な受容体をコードしていた。推定される一次構造は4個のFas-1ドメイン、2個のLamininタイプのEGFドメインを含む15個のEGFドメイン、1個のLinkドメインから構成されており、受容体をFELL-SREC-1(Fasciclin,EGF,Laminin-type EGF and Link domain containing SREC)と命名した。推定される蛋白質-蛋白質相互作用により細胞間や細胞-マトリックス間との接着や脾臓に発現量が多いことから、リンパ球のホーミングに関与することが示唆された。2)FELL-SREC-1にはスプライシングにより可溶性の受容体が存在しうることが明らかになった。また一次構造の相同性が高いパラロガス遺伝子FELL-SREC-2が存在し、そのcDNAをクローン化し構造を明らかにした。3)FELL-SREC-1の受容体活性を中和するモノクローナル抗体を用いた解析からFELL-SREC-1が内皮細胞の主要な受容体であることが示唆された。これらの結果をふまえ、内皮細胞に発現しているスカベンジャー受容体群と病態との関係を分子レベルで明らかにしたい。
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