地域住民より無作為に抽出された4000人余りに関して、とりあえず13種類の遺伝子に関し、研究を行う了承を得、施設内倫理委員会の承諾を得た。今年度は、候補遺伝子として、アミロライド感受性ナトリウムチャンネル・ガンマサブユニット(SCNN1G)、アルデステロン合成酵素(CYP11B2)、SA遺伝子を主な対象とした。 SCNN1Gのプロモーター、エクソン領域を96人でシークエンスを行い、プロモーターに4種類の、エクソン領域に6種類のsingle nucleotide polymorphism(SNP)を見出した。各SNPの連鎖不平衡の程度より、exon3のT474C及び、プロモーターのG(-173)A変異を選び、4000人に於いて遺伝型を決定した。遺伝型の決定は、TaqMan法を用いた。この方法によると、一日一人の実験補助員で1000から2000のサンプル遺伝型決定が可能であった。A(-173)アレルの出現頻度は8.5%であり、ホモの頻度は0.7%にすぎないが、この遺伝型を持つ者に低血圧が高頻度に認められた。プロモーター領域を用いたリボーターアッセイにて、A(-173)遺伝型の活性がG(-173)遺伝型の活性よりも低い事が認められ、SCNN1Gの発現低下が、ナトリウム再吸収低下につながり低血圧を発症するメカニズムが考えられた。 CYP11B2と高血圧の関連はみとめられず、SA遺伝子遺伝型と高尿酸血症の関連が認められたが、現在研究進行中である。高血圧素因遺伝子のodds比はそれほど高いとは想像されず(1.5-2.0)、intermediate phenotypeとの相関が確認されなければ、信憑性に乏しいと考えられ、疫学研究と遺伝子に即した研究のジレンマの解消が今後の課題である。
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