これまで、細胞やマウスでの実験系の確立を行った。高発現が相同組換えを昂進する可能性のある遺伝子として、相同組換えの開始に働くヒトRAD51とRAD52遺伝子、NBS1、MRE11、RAD50の三者複合体、組換えの際に飛び出たDNA端を切り取るERCC1、XPFの複合体などが考えられる。まず、データベースから得られたヒト由来のRAD51とRAD52遺伝子のcDNAの配列からプライマーを作成して、ヒトtestis由来のcDNAをPCRし、その後、配列を決定して変異の部分を修正し、データーベース通りのcDNAを得た。これを、高発現させる為に、ニワトリβアクチンのプロモーターを持つ発現ベクター(大阪大学・宮崎純一教授より供与)に導入した。同様に、NBS1とERCC1についてもこのベクターを用いて発現コンストラクトを作成した。このDNAを導入するヒト細胞株として、HeLa細胞とヌクレオチド除去修復欠損株であるXPAの細胞(XPA12-ROSV)を用いた。これまでに、ほぼ全ての形質転換株が得られ、発現の定量と、組換え頻度の解析を行っている。ゲノム上のDNA鎖切断は高頻度組換えを誘導することが知られている。我々の単離した、紫外線損傷の直ぐ5'に単鎖切断を入れるUVDE遺伝子を高発現したヒトXPA細胞を樹立し、単鎖切断の影響について詳しく解析した。これについても、組換え頻度への影響を解析している。マウス個体での組換え頻度の向上の為に、ヒトRAD51遺伝子のtransgenic mouseを作成した。ヒトRAD51は分子量の差からマウスのものと区別でき、マウスの各組織でマウスのRAD51以上の発現が見られた。正常に発育したが、時間と共に発癌と肥満の傾向が見られ、現在、統計的な有意差を測定中である。RAD52のtransgenic mouseについても計画中である。
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