ゲノム解析により、多くのギャップ領域が存在することが明らかにされてきた。ギャップ領域は、非常に小さな分子量のタンパク質をコードする場合もあるが、多くは翻訳されない低分子のRNAを合成する。ゲノム上の全遺伝子情報を解析し、機能面でのネットワークを解明する上で、低分子RNAの機能解析は重要である。本研究では、枯草菌において、全ての細胞内低分子RNAを網羅的に同定し、構造解析を行うことを目的とする。 枯草菌の対数増殖期の菌体の全RNA中に10種類程度の低分子RNAの存在を確認した。ノーザン解析から、このうち、4種類は5S RNA、scRNA、tmRNA、M1 RNAであった。長さが200塩基付近の2本のバンドについて(BS190RNA、および、BS200RNA)、ゲル抽出後、3'末端へpoly(A)付加して作成したcDNAの塩基配列を決定した。その結果、aspS-yrvM遺伝子間のギャップ領域にコードされていた。両末端の解析から、BS200RNAから、5'末端の10塩基が切断され、BS190RNAとなることが示唆された。BS190RNA遺伝子の欠損変異株では、増殖能の低下が見られ、タンパク質合成も一部阻害されていた。一方、X6Hisタグを付加したRNAポリメラーゼβサブユニットを発現する枯草菌から調製した菌体抽出液に対して、Ni-MTAカラムを用いてプルダウン実験を行った結果、BS190RNAは、特異的に、RNAポリメラーゼホロ酵素と結合することが明らかとなった。 今年度解析を重点的に行ったBS190RNA(前駆体は、BS200RNA)は、数種類のタンパク質の合成に転写レベルで関与すると予想された。BS190RNAに相同なRNAは他生物になかった。一方、ゲノム上の500塩基以上の100カ所のギャップ配列のノーザン解析結果から、調べた50箇所のうち、20箇所について転写物の存在が確認できた。
|