研究概要 |
1.ピリミジン生合成系遺伝子のうちのpyrFEを選択遺伝マーカーとして利用する系を確立した.in silico解析からゲノム上にpyrB,pyrC,pyrO,pyrE(URA5),pyrF(URA3)が存在し,ピリミジン生合成がオロト酸を代謝中間体として経由すると推測された.また,オロト酸の類似体5-フルオロオロト酸(5-FOA)を180μg/mlの濃度で合成培地に添加すると,90℃において古細菌Aeropyrum pernix野生株の増殖が完全に阻害された.さらに,野生株にUVを照射してpyrEまたはpyrFにナンセンス変異を導入した変異株では5-FOA耐性/ウラシル要求性の表現型が現れることが確認された.以上から,pyrFEを選択遺伝マーカーとして用いて5-FOA耐性/感受性あるいはウラシル要求性の有無によって,pyrFE変異株と野生株を選別できることが示された. 2.染色体DNAと部分的に相同領域を有する線状DNA断片を古細菌細胞に導入し,相同組み換え能を利用して標的遺伝子をワンステップで破壊する手法を確立した.pyrFEコード領域の大部分を欠失し,相同領域としてpyrFEの5'および3'隣接領域をもつ線状DNA断片をin vitroで作製し,M.HaeIIIメチラーゼでメチル化後,エレクトロポレーションによりA.pernix野生株細胞に導入した.90℃の高温でも融解しないGellan Gumプレート培地上で5-FOA耐性となったコロニーを選択した結果,pyrFE欠失株 K121(ΔpyrFE)を得た.また,既にゲノム配列情報から機能推定ができているORFのうち任意に選んだ14個(例えば,recA/RAD51ホモログであるradA[APE0119]など)について,コード領域にpyrFE遺伝子マーカーを挿入したDNA断片をK121(ΔpyrFE)株に導入後,ウラシル不含培地に生育するクローンとして破壊株を分離した.これら各破壊株についててはPCRやサザン分析で遺伝子破壊を確認するとともに表現型の解析も行った.
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