研究概要 |
1)私たち独自に分離したCHO変異細胞ZPG208に対しラットcDNA libraryを用いた機能相補活性スクリーニング法によりペルオキシソームの形成異常を相補するPEX3遺伝子のクローニングに成功した。ついでZPG208細胞と同じ相補性群であるペルオキシソーム欠損症相補性群G群の患者由来細胞にPEX3を発現させたところペルオキシソームの形成障害が相補された。さらにこの患者細胞のPEX3遺伝子をRT-PCR法により解析したところ、1塩基置換によるエクソン11の欠質をホモ接合型として有しており,この変異型PEX3は相補活性を有していないところから、PEX3がG群の病因遺伝子であると結論した。またPEX3遺伝子変異細胞ではペルオキシソームの膜形成にも異常を有することから、ZPG208細胞は膜形成の分子機構を解明するうえでも有用性が高い。 2)私たちは、PTS1レセプターであるPex5pには哺乳動物系ではアイソフォーム、Pex5pSおよびPex5pL(S型内部に37アミノ酸配列の挿入が認められる)が存在することを先に見出している。両者の機能に関し、新たに分離した特異的表現型(PTS2タンパク質の輸送のみに異常を示すが変異遺伝子はPTS1レセプターをコードするPEX5であった)を示すCHO変異細胞ZPG231の分子細胞生物学解析から、PTS1タンパク質輸送に関わる一方、Pex5pLはPTS2タンパク質の輸送をPTS2レセプターPex7pと結合することにより担っていることを見出した。またこれらのカーゴ・レセプター複合体はPex14p,Pex13pを主体とした膜透過装置を経てペルオキソーム内へ局在化されることも見出した。今後これら諸因子を用いることにより膜透過過程の詳細な解析が可能になると考えられる。 3)ペルオキシソーム膜透過装置の構成因子の一つと考えられるPex12pについて、まずPEX12異常CHO変異細胞ZP104およびZP109の変異部位を決定、ついでPex12pの構造と機能に関し検討した結果、C-末端部に存在する亜鉛フィンガーRINGはPex12pの機能に必須であることを明らかにした。またPex12pは他のペルオキシンPex5p,Pex10pなどと相互作用することも見出した。今後、カーゴタンパク質のオルガネラマトリックス側での解離機構や両レセプターの細胞質へのシャトル機構などの解明が待たれる。
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