プロテオーム解析などで各遺伝子の機能が網羅的に明らかになりつつある。それに伴い、各遺伝子がいつどのように発現するかという遺伝子発現制御システムの解析は、生命のダイナミックな振る舞いを解明する上で極めて重要な研究課題である。本研究では、情報科学的手法を駆使してこの問題をミクロ的におよびマクロ的にアプローチしている。 ミクロ的アプローチとしては、配列情報に基づいて各遺伝子の発現制御を推測する。遺伝子発現制御というと転写因子による制御が有名であるが、それ以外にも多くの制御が関与している。本研究では以下に示した制御をコンプリートゲノムの配列から情報科学的な解析を試みる。(1)転写終結部位(2)翻訳開始開始(3)翻訳終結部位(4)選択的スプライシング(5)コドン使用の偏り マクロ的アプローチとしては、遺伝子発現によって制御されている系全体の振る舞いを、コンピュータシミュレーションによって解析する。これまでに我々は、細胞代謝の振る舞いを統合的にシミュレートするためのソフトウェア「E-CELL」を開発してきた。本研究ではまず、実験データが豊富に揃っている以下の2つの系をモデル化することによって、遺伝子発現系仮想実験のための基盤技術を確立することを目的とする。 (1)λファージのライフサイクル(2)大腸菌lacオペロン
|