ゲノムインプリンティングを受ける哺乳類遺伝子がゲノムの特定の場所にクラスターを形成することは、それがインプリンティングの制御機構や進化に密接に関わることを示唆している。本研究ではインプリンティングドメインをモデルとして、今日の分子生物学の重要な課題である染色体の機能ドメインの構造、制御、進化についてゲノム解析を用いた総合的な研究を行う。本年度は、マウス第7染色体遠位部にあるインプリンティングドメイン(およそ1Mbに10個余のインプリンティング遺伝子がある)の全塩基配列を佐賀医大向井ら、理研服部らと共同で決定した。ヒトの当該領域(第11染色体短腕)と比較した結果、例えばKvLQT1のイントロン内に進化的に保存された配列があり、それらが制御配列である可能性が示された。さらに、H19周辺の保存された配列を実際にレポーター測定法やゲルシフト法により調べると、組織特異的エンハンサーやインプリンティングに関わるインスレーター蛋白質の結合配列であることが分かった。現在、このドメインの配列の特性などをコンピュータで詳しく解析中である。また、インプリンティングが哺乳類で進化した理由を探るため鳥類の研究を始め、上記のドメイン内にあるIGF2がニワトリでインプリンティングを受けないことを示した。当該ニワトリ領域をBACにクローン化し、現在その塩基配列の解析中である。鳥類も含めた比較ゲノム学的アプローチで、インプリンティングの進化についての手掛かりを得たい。
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