研究概要 |
<背景と目的> 葉の発生における細胞伸長制御機構を解明することは、植物の形、多様化の仕組みの理解に必須である。これまでに私は、アラビドプシスの葉細胞の極性伸長を司るANならびにROT3両遺伝子のクローニングに成功した。興味深いことにこれら遺伝子は、共に植物界に特異的な遺伝子族を成すことが判明した。そのうち葉の幅方向への細胞伸長は、蛋白質ム蛋白質相互作用を介した重要な調節因子であるAN遺伝子によって制御されると考えられた。これらの成果を受け、多細胞生物の形を左右する新たな細胞極性伸長制御機構、すなわちタンパク質の相互作用を通じた制御機構の解明を目的とする。 <検討結果> 1)GFP融合タンパク等を使った、細胞内局在の同定。 ANタンパクは、核内輸送シグナルを持ち、細胞質表層微小管と相互作用する可能性が推定されているため、AN::GFPのトランスジェニック植物を用い、その動きについて検討を行なった。その結果、AN蛋白質は核内だけでなく細胞質にも存在することが明らかになった。 2)Two-hybridシステムによる相互作用する蛋白質の同定。 酵母菌を使ったtwo-hybridの解析を進めた結果、重要な転写制御因子であるヒトのRbホモログとの相互作用が示唆された。 3)Microarrayシステムを用いた、AN遺伝子の下流調節因子の単離と解析。 an変異体においてup-regulateされている遺伝子のうち、zinc-finger proteinのような転写因子とERD10,Srcなどのストレス関連遺伝子について発現解析を行なった。その結果、これらの遺伝子がAN遺伝子によって制御されることが明らかとなった。 <考察> 本研究では分子遺伝学的及び生化学的アプローチという広範囲にわたる視点から行ない、ANタンパクと相互作用する因子の単離だけでなく標的遺伝子の単離とその解析を通じ、細胞伸長制御機構に関する総合的な解析を行なった。その結果、AN遺伝子は転写制御因子としてタンパク質の相互作用を通じ、細胞伸長制御機構において重要な役割をする基本因子であると考えられる。
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