研究概要 |
Genome projectが進行するにつれ、微生物由来の遺伝子断片がヒト・マウスにも多数存在し、機能するもの、可動性のものも含めて500以上見い出されることが判明した。これらはミトコンドリア(かつて独立のprokaryoteであった)などの由来に限定しない。進化は感染と宿主防衛の抗争史であった。 感染に対抗する宿主側の要因として,既成の「免疫系」よりprimitiveな生体防御系・innate immunityがハエからヒトにまで普遍的な系として最近見出された。この系はToll-like receptor(TLR)familyからなる。TLRとは宿主細胞に存在して微生物に特有な成分を見分けるレセプター(パターン認識レセプター)で、直接の細胞応答で侵入微生物を排除する。ヒトの抗原提示細胞は、微生物成分/TLRによって成熟化し、リンパ球を活性化する。既成の免疫系とはこのinnate immunityの先行的活性化の産物と言える。 パターン認識レセプターについてはgenome projectの情報のみが先行している状況である。その機能、活性化の分子機構,リガンド同定は今後の問題である。微生物成分の多様性に対応して認識レセプターがgenome levelで保持されているとの予測があるが,実証的な解析がなされたものは極めて限られる。ヒトではさらに不明の事項が多い。 ヒト樹状細胞のTLR刺激前後の抗原提示細胞から遺伝情報を槐集し差をとれば、微生物への生体防御に関与する遺伝子の基礎資料を体系化できるはずである。申請者はTLRを活性化するBCG成分をTLR ligandとしてこの1年で生体防御に関与する遺伝子群約120をリストした。このほかに未報告のヒト遺伝子約30を得ており、機能解析中である。
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