〈背景と目的〉 書き換え可能なハードウェアは、近年著しい性能向上を見せており、ある種の問題において、従来のマイクロプロセッサを大きく上回る性能を実現することが可能となってきた。本研究では、まず、セルラーオートマトンによる細胞シミュレーションの高速計算、および、パターンマッチングの高速処理の実現を目指す。 〈検討結果〉 容易に入手可能な市販の書き換え可能ハードウェアボード一枚を、既存のパーソナルコンピュータ一台に付加した簡単なシステムにより、上記問題の高速化を行った。 まず、セルラーオートマトンに関しては、ユーザが、セルラーオートマトンの各セル間の関係のみをC言語で記述するだけで、書き換え可能なハードウェア上でセルラーオートマトンの計算が可能となるシステム(C言語からハードウェア記述言語へのコンパイラ及びハードウェアライブラリ)の構築を行い、マイクロプロセッサ(Pentium-III750MHz)と比べて、150〜250倍の高速化が可能であることを確認した。また、パターンマッチングについては、上記システムにより、ホモロジー検索問題において、上記マイクロプロセッサと比べて、300倍を越える性能が実現可能であることを確認した。この性能は、小〜中規模の専用ハードウェアシステムに匹敵する。また、この問題においては、複数枚の書き換え可能ハードウェアボードを用いることにより、ほぼ、枚数に比例した性能を実現可能であることを確認した。 〈考察〉 書き換え可能性を有効に活用することにより、市販のボードを用いた小規模なシステムにおいて、マイクロプロセッサを大きく上回る性能を実現することができることを確認した。現在は、システムをより使いやすくするための整備、及び、機能の追加を進めており、今後、細胞シミュレーション等を本システム上で行う予定である。
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