研究概要 |
遺伝子配列(アミノ酸配列)に書かれているタンパク質立体構造・機能に関する情報を解読することは今日のライフサイエンス研究における最も重要な課題の一つである。アミノ酸配列から立体構造を予測しようとする時、1次元の配列ととりうる3次元の立体構造との適合性を評価するが、その予測構造の適合評価の基礎となる現有の「評価関数」は、経験的なもので精度の高いものではない。私達は、ヒトリゾチームをモデル物質として選び、全構造特性を網羅した変異型を作製し、変異に伴う構造変化と安定性変化のデータを集積し、「安定性/構造」データーベースを構築しつつある。本研究課題では、このデータベースを更に充実させて、信頼度の高い「評価関数」を作製し、蛋白質の立体構造を精密に予測できる方法を確立することを目的としている。 本研究で得られた分子内部での系統的で網羅的なヒトリゾチーム変異型の安定性と構造変化のデータとこれまでに蓄積したデータを解析し、各安定化因子のパラメータを決定した。これを、立体構造予測などに役立つ、各アミノ酸残基の安定化スケールの新しいテープルとして提案することができた。更に、分子表面残基の安定化への影響を調べるために、ヒトリゾチームの分子表面にあるVal2,Va74,Val110に焦点を当てた。これらはそれぞれβ構造、ループ、そしてαヘリックスと違った二次構造上の部位に位置している。それぞれの部位での一連の疎水性残基(Gly,Ile,Leu,Met,Phe)への変異型を作成し、それらの安定性変化をDSCで構造変化をX線結晶構造解析で調べた。得られた結果を総合的に解析して、分子表面での置換による水和構造の変化を考慮すると、分子内部で得られたパラメターを、分子表面変異型においても同様に安定性の評価に活用できることが分かった。
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