今年度は以下の4点を検討した。 1)アルツハイマー病脳でのHO-1分布とtau蛋白の関連。 2)tau蛋白が病的epitope(Alz50)を獲得する条件。 3)HO-1過剰発現の細胞に対する影響。 4)α-synuclein過剰発現と酸化的ストレスとの関連。 結果は以下の通りである。 1)HO-1の発現分布はリン酸化tau発現細胞の一部(10%程度)であり、Alz50陽性細胞と一致していた。 2)精製tauをHNE(4-hydroxy-2-onenal)処理した所、Alz50抗原性獲得が見られた。 3)HO-1過剰発現により、oxidative stressに対する耐性獲得が見られた。 4)α-synuclein cDNAを発現ベクターに挿入し、培養細胞(SH-SY5Y)での過剰発現系を確立した。 以上から、以下の諸点を考察した。アルツハイマー病脳内において、Alz50-epitopeの分布とHO-1分布が一致、かつAlz50-epitopeが過酸化脂質(HNE)の曝露によりリン酸化されたtauから生じる事実から、HO-1発現はtau蛋白の病的修飾過程と密接に関連していることが示唆された。HNEはLysineを介して蛋白を化学修飾するが、一方BilirubinもLysine残基を介して蛋白と結合することが知られている。HO-1過剰発現実験の結果と併せて、ヘム異化系はtauの病的変化を抑制し、神経保護的に働いている可能性がある。パーキンソン病中脳黒質細胞でもHO-1は発現増大しており、現在α-synucleinとの関連を検討している。
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