研究概要 |
(1)生後発達に伴い延髄興奮性シナプス、小脳抑制性シナプス、視床抑制性シナプスにおいては、伝達を媒介するCaチャネルのサブタイプがN,R,P/Q混合型からP/Q型単独にスイッチすることが明らかとなった。一方、脊髄後角抑制性シナプス、大脳皮質視覚野興奮性シナプスではCaチャネルのサブタイプのスイッチが全く起こらないことが明らかとなった。 (2)生後発達に伴い視床抑制性シナプスを媒介するGABA_A受容体のαサブユニットが2型から1型にスイッチすることによりシナプス電流の時間経過が短縮することがスライスによる電気生理学実験と組織培養を含む分子生物学実験から明らかとなった。視床抑制性シナプス応答時間は脳波の周波数および意識と密接に関係していることから、GABA_A受容体の生後発達が意識レベルの成熟をもたらすとの仮説を提唱した。 (3)音源定位に関わる延髄聴覚中継シナプスにおいて生後発達と共に後シナプス膜のNMDA受容体の発現が減少し、これによって一対一対応の入出力関係を持つ高信頼性のシナプスへの分化がなされることを明らかにした。更にNMDA受容体の発現抑制の一因が、生後10-12日に開始される聴覚入力であることを聴覚遮断実験によって明らかにした。 (4)音源定位に関わる延髄聴覚中継シナプスにおいて生後発達と共に伝達物質の放出確率が低下し、放出可能シナプス小胞プールサイズが増大する結果、低頻度入力に対する伝達効率は一定に保たれ、高頻度入力に対する伝達効率は増大することが見出された。
|