研究概要 |
ナメクジにおいて学習特異的に発現量が増大する蛋白をdifferential display法により発見し,LAPS18と名付けた.本年度の研究では,LAPS18の発現パターンの解析を行った.LAPS18特異的抗体を作成し,ニンジンとキニジンを用いて条件付けしたナメクジの脳切片におけるLAPS18の分布をみると,コントロールの脳ではLAPS18は嗅覚中枢である前脳の細胞体層に局在していたのに対し,条件付けした脳では前脳神経突起層において著しいLAPS18の増大を示した.次にナメクジ前脳の初代培養神経を用いて,LAPS18の細胞内分布を調べた.その結果,permeabilize処理を行わない細胞でも細胞表面が染色されたことから,LAPS18は細胞表面に存在することが明らかになった.特に神経突起の成長円錐などに特徴的に存在しているのが観察された.また,LAPS18cDNAをCOS細胞にtransfectして発現させたところ,LAPS18蛋白質が培養液中に遊離していた.これらの結果は,LAPS18が分泌蛋白として細胞表面において機能していることを示しており,その機能として細胞どうしの接着,神経突起の伸長やシナプス形成などに関与していることが予想された.そこで細胞の移動に関係しているかどうか調べる目的で,初代培養神経の培養液中にLAPS18または抗LAPS18抗体を加えて,細胞の移動を観察した.その結果,LAPS18は細胞の凝集を促進し,抗LAPS18抗体は細胞の移動を抑制した.これらの結果から,LAPS18は神経回路の構造的変化を通じて記憶形成に関わっていることが予想される.
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