研究概要 |
S-SCAMは私共が見出した神経シナプスの裏打ち蛋白質で、5ないし6個のPDZ領域と1個のグアニル酸キナーゼ領域、2個のWW頗域をもち、NMDA型グルタミン酸受容体や神経細胞接着因子ニューロリギンやRafキナーゼ結合分子MAGUINや低分子量G蛋白質Rap1の調節分子が相互作用し、シナプスの足場蛋白質として機能していると考えられている。その一方で,S-SCAMは代表的な神経シナプス裏打ち蛋白質PSD-95と類似する点が多く、果たして特有の機能を担っているかが、疑問となっている。そこで、私共はS-SCAMの遺伝子破壊マウスを作成して、個体レベルでのS-SCAMの機能の解明に着手している。今年度は、S-SCAMの遺伝子破壊マウスは正常に出生し、脳の形態に大きな異常を示さないこと、出生後しばらくは野生型と見分けがつかず、ミルクも正常に摂取すること、しかし、12時間から20時間の間に死亡に至ることを明らかにしている。現在、引き続き死亡原因を解明しようとしている。また、海馬由来の神経細胞を培養して、神経シナプスの構成分子の集積に異常が生じていないかを検討している。この他、S-SCAMにベータカテニンが結合することを見出し、シナプス形成における生理的意義を解析している。また、S-SCAMの変異体を神経細胞に発現させることにより、S-SCAMがシナプスに局在するのに必要な領域を決定しようとしている。
|