研究概要 |
本研究の目的は,第16番染色体に連鎖する常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症(Ishikawa K.et al.,Neurology,54:1971-5;2000)の原因遺伝子を解明することである. 遺伝子の単離には,まず10cMと広い遺伝子座領域をできるだけ狭める必要があった.このため,まず我々はこの領域に存在する多型性DNAマーカー20個について全家系を解析し,家系が異なっても共通するハプロタイプが存在する領域を探した.その結果,約3cMの領域で全家系の発症者が共通するハプロタイプを有することが判明し,候補遺伝子座を3cM領域に狭めることが可能となった.この結果を学術雑誌に投稿し,現在掲載準備中である(Takashima M.,et al.J.Hum Genet 2001,in press.). 次に我々はこの3cM領域をBACクローンによるcontigの構築を行い,この領域に存在する遺伝子を同定することとした.このためBACライブラリーと自動シークエンサーなどを用いて,多型性DNAマーカやSTSマーカーなどをアンカーにそれを有するBACクローンを同定した.その結果,この3cMの染色体領域を完全にカバーする,33個のBACクローンからなるcontigを構築した.この領域はごく最近報告されたヒトゲノム配列情報(Nature 409;745-964,2001)にも掲載されていない,我々が独自に完成させた染色体物理地図である. この領域ですでに公表されている塩基配列情報などをコンピュータで検索し,3塩基などの繰り返し配列を同定することができる.我々はこの方法で多数の繰り返し配列を網羅的に収集し,発症者においてそのいずれかが異常に伸長していないかを解析した.その結果現在まで30ほどの繰り返し配列について検索したが,発症者に特異的な異常伸長は見い出していない.このため,類縁疾患では原因とされている繰り返し配列の異常な伸長は,本疾患では関連しない可能性があげられる.今後はこの領域に存在し中枢神経系に発現する遺伝子に変異が否かを検索する予定である.
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