神経回路は特異的は細胞極性を示す神経細胞が、その神経突起を介した接着により形成される複雑なネットワークシステムである。この神経突起形成に低分子量G蛋白質Rhoファミリーが深く関与しており、細胞骨格の再構築により、Rhoは突起の退縮を、RacとCdc42は突起の伸長を引き起こすことが知られている。しかし、Rhoファミリーにはほかに様々な種類のG蛋白質が存在するがそれらの機能はほとんど不明である。我々は中枢神経系に特異的に発現しているがその神経機能が全く不明なRndサブファミリーの神経細胞の突起形成における役割を検討した。 Rndには3種類(Rnd1、Rnd2、Rnd3)存在し、PC12細胞にこれらのG蛋白質を発現させると、Rnd1とRnd3が多数の細い神経突起を形成させた。Rnd3は末梢でのみ発現し、Rnd1が中枢特異的発現を示すのでRnd1の作用を調べた。Rnd1による神経突起はNGFによるものと比較し、突起の数は多いが細く不規則な形態をしていた。突起内にはマイクロチューブルがのびているが、F-actinやニューロフィラメントはほとんどなかった。また、細胞膜周辺のcortical actin filamenntが消失しており、アクチノマイシンDでcortical actin filamenntを崩壊させるとやはり神経突起形成が引き起こされた。これらのことから、cortical actin filamenntは細胞膜からの突起伸長を抑制しており、Rnd1はこのcortical actin filamenntを壊すことにより細胞膜からの突起形成を可能にしているのではないかを推察される。 次に、このRnd1による神経突起形成機能の分子機構を明らかにする目的で、Rnd1に結合する分子を酵母のtwo-hybrid法を用いてスクリーニングした。その結果、いくつ特異的に結合する分子が同定され、その1つはRndサブファミリー全てに結合する分子、もう1つはRnd1とRnd3に特異的に結合する分子であった。
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