研究概要 |
本研究の目的は、霊長類(マカクサル)の大脳皮質の発達に、BDNFとその受容体(TrkB)がどのように関与しているのかを明らかにすることである。本研究では、各発達期の霊長類大脳皮質において、TrkBの中でもチロシンキナーゼをもつTK+と欠損しているTK-の間でどのようなダイマーが形成されるのかを調べた。マカクサル前頭前野(FD野)のホモジネートの1,000xg(20分)上清にBDNF(25〜100ng/ml)を反応させた後、形成したダイマーをクロスリンク後、WGAで沈澱させた。ついでTK+、TK-の両者を認識するポリクロナル抗体を使用し、ウェスタンブロットを行った。その結果、胎生120日ではTK+/TK+と100kDa/100kDaのホモダイマー、新生児期ではTK+/TK+とTK-/TK-のホモダイマー、成熟期ではTK+/TK-のヘテロダイマーとTK-/TK-のホモダイマーが検出された。さらに成熟期におけるこれらの作用はBDNF抗体により阻害された。NT-4はBDNFとほぼ同様に作用し、NT-3もわずかながら作用したが、NGFには効果がないことが明らかとなった。一方、TrkBと結合するタンパク質、Fyn,Shc及BDNFはクロスリンクされなかった。以上、霊長類大脳皮質におけるTrkBのダイマー形成は、各発達期において異なっており、BDNFによるシグナル伝達が発達に伴って変化することが示唆された。
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