初代培養ラット大脳神経細胞を用いた。Aβ1-40(1nM)、1-42(100pM)を同時投与下7日間培養後、グルタミン酸(20μM)を24時間投与したところ、毒性は有意に増強された。この細胞死はNMDA受容体遮断薬(MK801)で抑制された。Aβと同時にニコチン(0.5μM、7日間)を投与したところ、増強されたグルタミン酸毒性は抑制された。グルタミン酸単独(50μM、24時間)で誘発した細胞死も同様に、ニコチンを前投与(10μM、24時間)した群で抑制された。この保護効果はα7ニコチン性受容体拮抗薬であるαブンガロトキシンで遮断されるとともにPI3Kインヒビター(LY294002)で抑制された。また、非受容体型チロシンキナーゼの遮断薬であるPP2がニコチンの保護効果を抑制した。ニコチン処置後抽出したサンプルでPI3Kの標的酵素、Aktの活性化型(リン酸化型)Aktの増加を認めた。ニコチンの保護効果及びAktリン酸化はαプンガロトキシン、LY294002、PP2で抑制された。さらに、ニコチン処置群では抗アポトーシス効果を持つBcl-2やBcl-xの発現が増大していた。α7受容体抗体を用いた免疫沈降で得たタンパクで行ったイムノプロットでPI3Kp85サプユニットが見出された。また、非受容体型チロシンキナーゼであるSrcファミリーのFynが認められた。それぞれの抗体で行った免疫沈降サンプルからα7受容体が見出され、これらが会合している可能性が示された。 以上の結果より、ニコチン性受容体刺激はグルタミン酸毒性から神経細胞を保護する機構を持ち、その機構にはPI3K-Akt-Bcl-2の系が寄与している。また、α7受容体-Fynがこの系に関与していることが示唆された。
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