研究概要 |
本研究では神経細胞がどのような条件でスパイク信号を発生し、どのくらいの量の情報を送ることができるか、を定量的に明らかにするため、まず脳から計測された神経スパイクを分析し、次に脳切片スライス上の細胞内通電実験をおこなった。まず、遅延作業課題実行中のサル前頭連合野の神経細胞のスパイクデータ時系列(京都大学船橋氏のデータ)、動くドットを提示した際のMT野MST野の神経細胞のスパイク時系列(玉川大学大野氏のデータ)について、様々なスパイク間隔統計を計量し、神経スパイク生成モデルのデータとの整合性を調べた。その結果、これまで標準的だと考えられてきた神経スパイク発生モデルが棄却されることが明らかになり(Neural Computation 11;935-951,1999)モデル修正の提案を行った(Neural Networks,12;1181-1190,1999)。つぎに、異なる領野から得られた統計量を比較することによって、スパイク統計量がサルの覚醒、麻酔の状態の違いや領野の違いを反映しているということが明らかになった。さらに、これまでとは異なる新しい統計量をこれら時系列データに適用することによって、同じ領野内でも細胞固有の統計性をとらえられる統計量が存在することがわかった。また、脳切片スライス実験の準備実験を開始した。まずは従来の細胞内通電実験の技能を習得し、次には標準的な細胞内通電実験とは異なる新しい実験プロトコルについて検討を加え、その実験に必要となる補助装置を導入しその作動を確認した。
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