研究概要 |
我々は孤発性アルツハイマー病(SAD)患者脳の全例においてプレセニリン2(PS2)のエクソン5を欠く新規スプライシング変種(PS2V)が発現していること、PS2Vの発現は低酸素刺激で発現誘導される事、PS2Vの細胞内発現は細胞死を引き起こすことを明らかとしてきた(J.Neurochem.,1999)。本年度はまずPS2Vの細胞死機序を検討した。その結果我々が明らかとした家族性AD(FAD)における神経細胞死(NAture Cell Biol.,2000)と同様の機序で細胞死を引き起こすことを見いだした。すなわち、SADにおける神経細胞死は小胞体に存在し小胞体内の不良蛋白の処理の司令塔の一つである小胞体ストレスセンサーIre1のリン酸化抑制が原因であることを、小胞体の機能障害を起源とする神経細胞死であることをあきらかとした(J.Biol.Chem.,2001)。これらの成果はPS2premRNAからエクソン5のみを切り出すスブライシング機構を解明できれば、その機構を制御することによりSADにおける神経細胞死を防御しうる創薬に結びつく。そこで我々はゲルシフトアッセイなどにより低酸素刺激を加えたときに特異的に発現しかつPS2premRNAのエクソン5に特異的に結合する因子の取得をめざした。その結果Factor Xと名付けた因子の同定に成功し、現在機能解析を行っている。これらの成果はバイオコンペJAPANに入選し本選考に臨んでいる。一方FADにおける神経細胞死機序の研究ではPS1変異体がIre1以外の小胞体ストレスセンサー、ATF6,PERKの機能障害を引き起こしていることを明らかとした。すなわちFADにおける神経細胞死はPS1変異体が小胞体ストレスセンサー全般の機能を低下させ、その結果小胞体内に折りたたみ不良蛋白が蓄積する事により生ずる小胞体機能障害に帰する事が明らかとされた(投稿中)。現在この神経細胞死にどのようなカスベースが関与しているかを解析しミトコンドリアの機能障害を起源とする細胞死退き所との違いを明確に確立すべく検討中である。
|