研究概要 |
最近、発表者が発見したRING-IBR-RINGモチーフを持つRBCK1は、若年性パーキンソン病原因遺伝子産物Parkinと高い相同性を有していた(Morett and Bork,1999)。これまでに発表者は、RBCK1がDNA結合能、転写活性化能、並びに核移行活性を持つことを明らかにしている。そこで本研究では、ParkinもRBCK1と同様に転写因子と相互作用し、変異を受けると転写レベルでの異常を引き起こして、パーキンソン病を発症させると作業仮説を設定し実験を行った。実験の結果よりParkinは、PKA依存的な転写活性を持つことが分かった。またPKAによるプロテインキナーゼシグナルは、神経細胞のアポトーシスに働くことがわかっている。そこでPKAのシグナルがParkinによるアポトーシス誘導タンパク質遺伝子の転写を導き、その結果、黒質神経細胞の変性が引き起こされると考えられた。最近Parkinは、ユビキチンリガーゼ(E3)であることが発表されており、RBCK1も発表者により(E3)であることが証明されている。以上より転写活性化能とE3活性を併せ持つParkinとRBCK1は機能的にホモログである事が明らかとなった。またユビキチン-プロテアソームシステムにより分解をうける短寿命転写因子では、転写開始にE3が必要とされることが提唱されている(Thomas and Tayers,2000)。今後、Parkinのユビキチンリガーゼ活性と本研究により見出された転写活性を結びつける研究を行う予定である。
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