研究概要 |
哺乳類の脳・神経系における細胞膜ラフト領域の情報伝達への寄与を解析する目的で,まずこの領域の構成因子を解析した.本年度の研究において, 1,調製方法の違いによりラフト構成因子が大きく変動することを見い出した.また, 2,ラフト局在性の細胞接着因子であるキロンとOBCAMの視床下部視交差上核における発現パターンを比較し,さらに塩投与により誘因される構造変化に伴う発現変化を解析した. 3,神経細胞の極性形成とラフトとの関わりを解析する手始めにラフトの主要タンパク質であるNAP-22の極性形成の時間経過における軸索への局在の度合いを培養神経細胞を用いて解析し,このタンパク質の軸索への局在が極性形成後の顕著になることを見い出した.すなわちNAP-22は直接に極性形成に関わるというよりその維持に関与している可能性が高い. 4,ラフトのコレステロールにNAP-22が結合することを昨年見い出したが,この結合を詳細に解析した結果,NAP-22はフォスファチジルコリン存在下においてのみコレステロール結合能を持つことがわかった.さらにNAP-22がリポソーム膜において脂質の不均一分布を誘起することも見い出された. 5.ウシ副腎髄質のクロム親和細胞中の分泌顆粒の顆粒膜ラフトの構成因子を解析し,V-ATPaseが局在することを見い出した.これはラフトが膜のサイクリングに関与する可能性を示している. 6,三量体Gタンパク質のラフト局在はよく知られているが,低分子量Gタンパク質の内,膜構造の制御因子として知られているRhoファミリーGタンパク質の局在を調べ,Rac1は局在するがRho,Cdc42は局在しないことを見い出した. このようにラフト構成因子の解析により,ラフトが細胞膜の構造変化やサイクリング,細胞接着,細胞極性の維持等,種々の情報伝達,情報変換の機構に関与することを見い出した.
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