Apaf1は、ミトコンドリア依存性アポトーシスにおいてカスパーゼ9を活性化するアダプター分子である。Apaf1欠損細胞はさまざまなアポトーシス誘導刺激に抵抗性を示し、またApaf1欠損マウスは脳の発生過程におけるアポトーシスの著しい減少のため神経細胞の蓄積により胎生期に死亡する。Apaf1欠損、および野生型胎仔より神経上皮細胞を得て、これらを分散培養し、これらに1)成長因子除去2)紫外線照射によりアポトーシスを誘導したところ、成長因子除去では、野生型細胞ではアポトーシスが誘導され、Apaf1欠損細胞では、アポトーシスは認められなかった。このことは、Apaf1が神経細胞の成長過程における(成長因子欠乏などにより引き起こされる)細胞死に重要な役割を果たしていることを示していると考えられた。一方、紫外線照射においては、予期に反してApaf1欠損細胞でも野生型と同様に細胞死が認められた。Apaf1を欠損する胎生幹細胞や胸腺細胞は紫外線照射に対して抵抗性を示すことから、神経細胞とそれ以外の細胞とで、紫外線照射により引き起こされるアポトーシスの誘導機構が異なる可能性が考えられた。今後抗がん剤によるアポトーシス誘導や、polyQ(ポリグルタミン)発現による細胞死に関しても検討し、神経上皮細胞の分化・細胞死の機構を解析していく予定である。
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