高齢化社会で重要課題であるアルツハイマー病研究での研究には、2つの方向性がある。1つは、アミロイド蛋白を中心としたものであり、老人斑の神経病変を出発点にしている。残る1つは、神経原線維変化であり、タウ蛋白を中心に展開している。神経原線維変化はアルツハイマー病だけでなく、多くの痴呆症に散見されることから、むしろ痴呆症共通カスケードとして出現する非特異的な病変である可能性が考えられてきたが、FTDP-17(rontotem poral dementia with parkisonism linked to chromosome17)の原因遺伝子がタウ蛋白であることから多くの注目を集めるに至っている。今回、アルツハイマー病をはじめとする痴呆症におけるタウ蛋白の生理学的および病理学的意義を探索する目的で、6種類のタウ蛋白分子種を識別するモノクローナル抗体とポリクローナル抗体を作成した。まず、その特異性を確認した後、実際のアルツハイマー病脳組織を用いて分析したところタウアイソフォームの不均一性が観察された。すなわち、タウ352とタウ381の2つの分子種の脳内蓄積が他のアイソフォーム(タウ383、410、412、441)より顕著であることを見出すことができた。この結果は、従来タウ蛋白の異常リン酸化の高進だけに焦点が集められてきた神経原線維変化研究に対し、アイソフォームの変化という痴呆研究に新たな視点を与えるものであり、FTDP-17とも共有する異常反応である可能性が示唆された。今回の結果は、痴呆症の病因機構の解明だけでなく診断という臨床応用面でも有用である可能性があり、今後の研究展開の重要性が考えられる。
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