我々はヒト直立二足歩行の高次制御機序の実験的解明を目的としてoperant conditioning法を用い、流れベルト上で直立二足歩行するニホンサル歩行モデルを確立した。このモデルの歩容はヒト二足歩行の歩容と多くの類似点を有し、サル歩行モデルがヒトと共通した二足歩行実行システムを歩行運動学習によって獲得した可能性を示唆する。本研究の目的は、直立二足歩行運動の高次制御機序の解明のために、トレッドミル上を二足で歩行しているニホンサルの大脳皮質一次運動野から錐体路細胞活動の細胞外記録を試み、大脳皮質一次運動野が直立二足歩行運動の実行や歩行周期の制御にどのように関わっているのかを明らかにすることにある。本課題では平成12年度を直立二足歩行学習訓練および神経活動記録前準備の期間として申請した。その結果、 1.二足歩行未学習の一頭のサルが歩行運動学習によってトレッドミル上での直立二足歩行運動能力を獲得した。2.四足歩行から二足歩行への変換機序について運動力学的解析を行い、股関節がその歩容の変換に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この研究成果の一部については既に報告した(研究発表参照)。 平成12年度の科学研究費で頭部固定装置およびモンキーチェアーを購入することができたので、大脳皮質一次運動野の出力細胞から記録を行うための設備を整えることができた。平成13年度には、左右下肢の屈筋と伸筋に対する筋電図導出用ワイヤー電極の慢性埋め込み手術、MRI撮影画像およびstereotaxic coordinateを参考にした頭蓋上への記録用chamberの装着手術、さらに延髄錐体刺激用タングステン電極の慢性埋め込み手術を行い、二足歩行能力を獲得したサルの一次運動野から二足歩行運動遂行中の錐体路細胞活動を導出記録する予定である。
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