研究概要 |
発達初期のケオリンの大槽内注入によってネコの水頭症モデルを作製した。脳室の拡大、大脳皮質の薄層化は顕著であったが、脳室-腹腔内シャント手術を施行することによって、脳の解剖学的異常を維持した状態で、成獣まで維持することができた。光学計測法により、視覚野における方位選択性カラムを視覚化したところ、全体的なカラム形成パターンはほぼ正常に維持されていた。また、c-fos遺伝子のタンパク産物を指標にしたActivity-Mappingにより、これらの異常発達視覚野においても眼優位カラムが形成されていることが明らかになった。スライスを用いた実験から皮質II/III層の錘体細胞は白質の電気刺激に対して、正常なEPSP,活動電位を発生する事が明らかになった。スライス標本を用いた細胞内カルシウム濃度のイメージングにより、NMDAの灌流液内投与に対する反応が小さくなっているにもかかわらず、ノルアドレナリンに対する応答は、逆に有意に増大していることが証明された。HPLCを用いた解析により、この際、皮質組織内でのノルアドレナリン代謝レベルが亢進していることも明らかになった。 以上の結果は、発達期の大脳皮質の神経回路、特に機能カラム構造が如何に可塑的で、冗長性を有しているかを示しており、発達異常脳での機能維持に中枢ノルアドレナリン系が重要な働きをしていることが示唆された。 今後、同様のモデル動物を用いて、感受性期内の単眼遮蔽による可塑的変化が、ノルアドレナリン系を薬理操作した場合どのように修飾されるかについて、検討を続けていく予定である。
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