研究課題/領域番号 |
12210153
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研究種目 |
特定領域研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
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研究機関 | 理化学研究所 |
研究代表者 |
高島 明彦 理化学研究所, アルツハイマー病研究チーム, チームリーダー(研究職) (00154774)
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研究分担者 |
朴 正美 理化学研究所, アルツハイマー病研究チーム, テクニカルスタッフ(研究職)
菊池 尚美 理化学研究所, アルツハイマー病研究チーム, テクニカルスタッフ(研究職)
村山 美由紀 理化学研究所, アルツハイマー病研究チーム, テクニカルスタッフ(研究職)
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研究期間 (年度) |
2000
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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キーワード | 神経原線維変化 / アルツハイマー病 / 遺伝子改変動物 / FTDP17 / 変異タウ |
研究概要 |
神経原線維変化はアルツハイマー病を含むタウの蓄積を伴う神経変性症では特徴的な病理変化である。神経原線維変化が出現する場所では神経細胞の脱落が起こる。そのため、神経原線維変化の出現頻度は痴呆程度と相関することが知られている。すなわち、神経原線維変化形成機構には神経細胞死を引き起こす機構が包含されていることを示している。これらのことから、神経原線維変化形成はアルツハイマー病を含むタウ蓄積を伴う神経変性症の治療ターゲットとなるはずである。今回の我々の研究の目的は遺伝子改変動物を作製し、その脳内にヒトでみられるのと同様の性質を持つ神経原線維変化を観察することである。家族性のFronto-temporal dementia parkinsonism 17(FTDP17)の責任遺伝子としてタウ遺伝子に変異が見いだされた。我々はそのうちのV337M変異を持つヒト4リピートcDNAをマウスに遺伝子導入し、3ラインの動物を得た。発現量は内在性のタウの10-5%であった。発現は海馬の錐体細胞および皮質で観察された。この変異タウを発現する神経細胞はリン酸化タウ抗体で陽性に染色された。ガリアス鍍銀染色では変異タウを発現している神経細胞の中でも変形した核を持つものが陽性に染色された。これらの細胞は複数のリン酸化抗体、PHFタウに特異的な抗体Alz50,ユビキチン抗体に陽性に染色されることから、神経原線維変化でみられる抗原性を有することが示された。さらに、β-シート構造を認識するチオフラビン、コンゴーレッドの複屈折性を示すことからこれらの神経細胞内にタウの繊維状構造物である神経原線維変化が形成されていることが示唆された。生化学的検討においてもSDS不溶性画分において電子顕微鏡下で繊維化したタウの存在が確認された。また、変異タウおよび内在性タウがSDS不溶性画分に回収されたことから内在性および変異タウがこのタウの繊維化に寄与していることが示された。更に、これらの遺伝子改変動物の行動解析から神経原線維変化形成に伴って高架式十字迷路において抗不安行動を示すことが示された。これらのことから、当初の目的である神経原線維変化を形成するマウスの作出する事が出来た。今後この動物をまた他のタウトランスジェニックマウスとの比較によって神経原線維変化の形成機構および神経細胞死機構を明らかにしてゆく予定である。
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