研究概要 |
本研究で我々は、発生工学的手法により運動ニューロン特異的遺伝子発現・ノックアウトシステムを確立する。家族性筋萎縮性側索硬化症(Familial Amyotrophic Lateral Sclerosis,FALS)の病因遺伝子を過剰発現し、FALSの良い疾患モデルとなる変異SODトランスジェニック(TG)マウスと運動ニューロン特異的にグルタミン酸受容体を発現するTGマウスを掛け合わせ、疾患への影響をみることによって、変性の分子機構へのグルタミン酸毒性の関与を明らかにする計画である。変異SODの毒性に対し運動ニューロンのみが脆弱である理由として、グルタミン酸毒性の関与の可能性がある。運動ニューロン死に関与する主なグルタミン酸受容体はカルシウムを透過するAMPA受容体である。AMPA受容体はGluR1-4のサブユニットの複合体で構成され、GluR2サブユニットを持たない受容体がカルシウム透過型となる。運動ニューロンではGluR2の発現量が低いために、カルシウム透過型AMPA受容体の発現が他のニューロンに比べて高い可能性が指摘されている^<1)>。そこで我々はコリンアセチル転移酵素(ChAT)のプロモータを用いてGluR2遺伝子を運動ニューロンで過剰発現し、AMPA受容体がカルシウム不透過型となるマウスを作製する。このマウスを変異SODTgマウスとかけ合わせて、運動ニューロン特異的変性への関与を評価する。本年度はコリン作動性ニューロン特異的発現を決定する6.4kbのChATプロモータ領域^<2)>の下流に目的の遺伝子とレポーター遺伝子EGFPを発現するコンストラクトを作製した。さらに目的の遺伝子としてラットGluR2を挿入し、TGマウスを作製した(ChAT-GluR2)。ChAT-GluR2マウス2ラインでレポーター遺伝子GFPの脊髄運動ニューロンでの発現を確認した。
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