研究概要 |
本研究「計算論的立場からの神経細胞集団の情報処理の解明」の目標は、(I)実験解析手法の開発と(II)モデルによる現象の数理的解明の二つの視点から、(a)神経細胞の平均発火頻度に情報がのっているという立場(rate coding)と(b)より微細なスパイク列の構造に情報があるという立場(temporal coding)のそれぞれの立場から研究することにあった。その中で、本年度は特に、(I),(II)の(a)に関して研究を進めた。具体的には、(I)の(a)として神経集団による外部刺激の符号化という観点から研究を進めた。ここでは、フィシャー情報量という統計的な量に基づき、神経細胞の平均発火頻度の集合から外部刺激を復元する際に、どれ位正確に復元できるかということについて理論的解析を行なった。これは理論系の学会誌としては最も良いとされるNeural Computationに既に2本の論文が印刷中となっている。また、大脳基底核における尾状核での実験結果の解析を実際に行なっており、その一部は学会発表をすませ現在論文準備中である。(II)(a)としては、一つは、今述べた尾状核での実験解析に基づき、報酬信号に基づく自己組織化学習モデルの開発を行ない、このモデルが実験的結果を良く予測することを示せた。この研究は既に論文の投稿を終え、現在審査中である。また、大脳皮質-大脳基底核ループの逐次運動の学習・制御のモデルと実験結果の比較を行ない、その結果に関する論文が現在印刷中であり、また優れた論文を集めた権威ある図書に寄稿を行なった。
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