研究概要 |
これまで、神経変性疾患における細胞内蛋白質分解機構の重要性は様々な状況から推測されていたが、確証は少なかった。我々は家族性パーキンソニズムの一種である常染色体劣性遺伝性若年性パーキンソニズム(AR-JP:autosomal recessive juvenile parkinsonism)の原因遺伝子産物Parkinの解析を行うことによって、この蛋白質がユビキチンリガーゼという細胞内蛋白質分解に必須の成分であることを見いだした。 ユビキチンは,細胞内の蛋白質が破壊されるときにその標的蛋白質に選択的に結合して分解シグナルとなる分子で,このユビキチンによって修飾された蛋白質は,プロテアソームという細胞内蛋白質分解酵素によって認識され、分解処理される.この中で、ユビキチンリガーゼはユビキチンを標的蛋白質に連結させる反応を触媒することから,細胞内における選択的な蛋白質分解において最も重要な酵素と考えられている. 今回の研究では、調べた限り全てのAR-JP患者にみられる変異型Parkinがこの機能を完全に喪失していることも見いだした.このことは、本神経変性疾患において、特定の蛋白質が分解されずにいることが、発症の原因となっていることを示唆している。従って、今後はAR-JPにおいて分解されなくなった蛋白質の検索を行う。そのなかで、どの蛋白質が神経細胞死を誘導するのかを明らかにする。また、他の神経変性疾患で観察されているある種の蛋白質の蓄積現象と蛋白質分解系との関連も調べたい。
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