研究課題/領域番号 |
12213035
|
研究種目 |
特定領域研究(C)
|
配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
生物系
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
丸 義朗 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (00251447)
|
研究期間 (年度) |
2000
|
研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
|
配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2000年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
|
キーワード | 慢性骨髄性白血病 / 癌遺伝子 / BCR-ABL / DNA修復 / XPB / TFIIH |
研究概要 |
紫外線によるDNA修復障害を有するハムスター27-1細胞はXPBの発現でこれを復元できる(27-1/XPB細胞)が、恒常的活性化型ABLであるBCR-ABLの同時発現(27-1/XPB/BCR-ABL細胞)でこの復元効果が抑制される。同様な生物学的現象は、紫外線(UV)以外にDNA損傷性抗腫瘍剤cisplatinでも確認されたが、H2O2では認められなかった。UV、cisplatinによるDNA損傷がTFIIHを主体とするnucleotide excision repair(NER)という修復機構で修復されるのに対し、H2O2によるそれはbase excision repair(BER)という別の修復機転でなされることを考えるこの事実はBCR-ABLの特異的なDNA修復阻害が確かなものであることを支持する。DNA損傷の誘導でTFIIHの構成員p44がTFIIH,特にXPB沈降産物に時間依存性に結合してくることを観察した。しかもこの効果は、温度感受性BCR-ABL変異体を用いた解析で、BCR-ABLのチロシンキナーゼ活性依存性に抑制された。フランスIGBMC/INSERM/ULPのJean-Marc Egly博士との共同研究で、同研究室に直接赴き、大量培養と抗p44抗体を利用した方法でTFIIHの純化精製法を修得した。27-1/XPB細胞及び27-1/XPB/BCR-ABL細胞からTFIIHを精製し、in vitro上DNA修復活性、転写活性を検討した。転写活性はBCR-ABL発現細胞で約2倍の上昇を認めたが、cisplatin処理で引き起こしたDNA損傷に対する修復活性は5-10%程度しか低下を認めず有意とは判断できなかった。XPBと結合能力を有するBCR-ABLそのものも純化したTFIIHに含まれないことから、高度に精製すると相互作用する分子も複合体から乖離してしまい、抑制が解除される可能性を考えたが、その抑制分子はBCR-ABL以外の分子も想定している。ヒト慢性骨髄性白血病CMLの急性転化の最大の特徴はゲノム不安定性であるが、これを統一的に十分説明する分子生物学的根拠は確立されていない。TFIIH複合体は転写、DNA修復、アポトーシスなどに関与することから、その活性のBCR-ABLによる修飾はDNA修復のみならず転写を介して慢性骨髄性白血病細胞にmutator phenotypeを付与するのではないかと考えられる。
|