研究概要 |
1,サイトカイン欠損マウスを用いた皮膚化学発がん試験:IL-1,IL-1レセプターアンタゴニスト(ra)などのサイトカイン遺伝子欠損マウスに対して化学発がん剤のメチルコラントレンを単回投与し、皮下組織に線維肉腫を発生させた。4〜5ヶ月間の観察結果IFN-γ欠損マウスでは、有意に発がん亢進が認められたが、IL-1,TNFα欠損マウスでは、野生型と有意な差を認めることができなかった。つまり、IL-1やTNFαはメチルコラントレンによる発がんには関与していないことが明らかとなった。 2,サイトカイン欠損腫瘍株の樹立:メチルコラントレンで誘発した肉腫を無菌的に採取し、サイトカイン欠損腫瘍株の樹立を試みた。その結果、IFNγ、TNFα、IL-1ra欠損マウスより繊維肉腫の培養株を樹立することができた。今後、動物への移植を試みる。 3,大腸がん(ポリプ)試験:ヒトの家族性大腸腺腫症(FAP)のモデルマウスであるApcMinマウスをサイトカイン欠損マウスと交配し、サイトカインの欠損がポリプの発生にどのように影響するのかを検討した。その結果、IL-6,TNFαの欠損マウスでは、ポリプの発生数において野生型と比較して有意な差は認められなかった。一方、IL-1欠損マウスではポリプの発生数に減少が、逆にIL-1ra欠損マウスでは、ポリプの発生数に増加が認められた。 4,2-5OAS欠損マウスの作製:ヒトの2-5OASの遺伝子群はOAS1,2,3およびOAS-RP(related protein)の4種が知られているが、マウスの2-5OAS遺伝子群は明らかにされていなかった。しかし、今回われわれは、マウスの2-5OAS遺伝子群は11種存在することを明らかにした。また、マウスのOASL5は脳や神経に強く発現していることがわかったので、この遺伝子の欠損マウスの作出を試みている。
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