研究概要 |
1.ガン抗原ペプチドの探索については、ガン細胞で高発現されることが報告されている25種のタンパク質について、ペプチドライブラリー法を用いてMHC class I、K^b,D^b,L^d結合性ペプチドを予測した。探索した。予想スコア-が2SD(標準偏差)を越えるものについてペプチドを合成し結合活性を測定した。その結果、36のMHC結合ペプチドが同定できた。今後、これらに対して細胞障害性T細胞の誘導が可能かどうかを調べる予定である。ペプチドライブラリー法では、ほぼ80%の任意のペプチドについて結合能をKd値にして一桁以内に予想することが可能であった。 2.昨年我々は、腫瘍細胞で高発現され、正常のアミノ酸配列をもつWT1腫瘍抗原ペプチドの報告をした。これら自己抗原に対して誘導されるT細胞は、自己寛容を逃れた低〜中結合親和性T細胞が主である。これらT細胞の抗原認識機構および応答性の違いについて研究をすすめた。解析が可能な2CTCRの系で、1分子レベルでのTCRのMHC+ペプチドに対する結合親和性をBIAcoreを用いて測定した。その結果、自己と外来抗原であるMHC+ペプチドに対する結合親和性の差は、Kd値にして高々一桁であった。中結合親和性TCRの解離の半減期は1秒に満たず、CD8の共会合をもたらすには十分でなかった。このTCRのみの刹那的なMHC分子へのengagementは、至適抗原量以下では不完全なζ鎖のリン酸化をもたらし、fynを介してむしろ活性化に負の応答を引き起こした。細胞膜上ではTCRの凝集効率の低下を招いた。
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