研究概要 |
1)雌F344ラット,雄LECラット各12匹を用いてF1ラットを作製し,最終的に雄(F344xLEC)F2ラット200匹余りを作製した。作製した雄F2ラットに7週齢からMNU(50mg/kg,pH6.0)を週1回腹腔内注射し(計4回),30週後にエーテル麻酔下に屠殺した。全消化管を開き,腫瘍の発生部位,大きさ,数,他臓器の腫瘍を記録した。全ての大腸腫瘍を組織学的に観察し,腫瘍の深達度を検索した。発がん物質投与前に凍結保存しておいた尾からゲノムDNAを抽出し,各染色体上のマイクロサテライトマーカーのうちでF344ラットとLECラットで多型性を示すマーカーを用いて連鎖解析を行っている。次にAOMを用いて同様の研究を行い,MNUの結果と比較する予定である。 AOMは15mg/kgを週1回,計5回皮下注射し,36週齢で屠殺する。2)LECラットのMNUおよびAOM誘発大腸発がん高感受性,F344ラットの低感受性の原因を検索するために大腸粘膜の組織学的所見,銅濃度(原子吸光法),BrdU標識率,wesrern blottingおよび免疫組織化学によるCOX-2した。まず,110週齢までの雄LECラット186匹の盲腸を組織学的に検索したところ,4-10週齢の雄LECラットの67%に盲腸潰瘍がみられ,11-70週齢ではその頻度は20%前後であった。それ以降まで生存したラットには盲腸潰瘍はみられなかった。LECラット結腸粘膜にはF344ラットと比べて炎症細胞浸潤の増加,COX-2陽性細胞の増加,BrdU標識率の軽度の上昇がみられた。大腸粘膜の銅濃度には差がみられなかった。今後,1)二種類の発がん物質で発がん感受性(抵抗性)遺伝子座が異なるか否か,2)大腸炎と発がん感受性遺伝子座の関係,を追求する。
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