1)白血病類縁疾患には急性骨髄性白血病(AML)、骨髄異形成症候群(MDS)、慢性骨髄性白血病(CML)など様々な疾患群が存在する。これらの中で診断に有用な遺伝子マーカーが存在する例は極めて稀であり、DNAチップを用いた診断マーカーの同定が待たれる。我々は多くの白血病が造血幹細胞あるいはそのごく近傍の細胞から発症することに着目し、各種白血病患者骨髄より造血幹細胞分画のみを純化し保存する「Blast Bank」を設置した。平成13年3月現在で既に220例を越える様々な白血病芽球の保存に成功した。 2)本バンク細胞を用いてDNAチップ解析をすることで、骨髄中の白血病芽球の割合やそれぞれの疾患における芽球の分化傾向の違いなどに影響されない、効率の良いDNAチップ解析が可能となると期待された。そこでまず以下の例をテストケースとして新たな分子マーカーの同定を試みた。MDSは病期の進行に伴って急性白血病様の病態へと変化する。白血化したMDSはde novo AMLと比べて薬剤抵抗性であり、生命予後も極めて悪い。しかし現段階で両疾患を区別する基準は細胞の形態異常の有無のみであり、鑑別はしばしば困難である。そこで我々は膜蛋白をスポットしたカスタムDNAチップを用いてMDS芽球に固有な発現を示す遺伝子の同定を試みた。その結果Delta/Notchファミリーに属するDlkがMDSにおいてのみ高発現することが明らかになった。しかもこの選択的発現はMDS22例、AML31例を用いた定量的real-time PCRによっても確認された。
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