研究概要 |
我々の教室では乳癌や肝癌を中心にLOH解析を行ってきた結果、17q25.1,4q21-22,16q24.2,6q21,6q25.3の5領域それぞれに、約1cMの共通欠失領域を同定している。これら5領域からの癌関連遺伝子の単離を目的に種々の癌細胞株で発現異常を示す同領域内のESTを癌関連候補遺伝子と考え、新規癌関連遺伝子を単離を試みた。18組織119株の癌細胞株を入手しmRNAからcDNAの合成を完了した。発現解析の対象と成るESTは各領域それぞれ約40、合計200あまりのESTで、半定量的RT-PCR法にて現在までに91のESTの解析を終えintegrin β4 subunit,JNK3,osteopontin,protein tyrosine phosphataseを含む16ESTに発現の極端な減弱、消失を確認している。発現異常を示す17q25領域の二つのESTからオリゴキャッブ法により作製された完全長cDNAライブラリーのスクリーニングや5′RACE法によりそれぞれ新規遺伝子を単離した。一つは7回膜貫通ドメインを持つ442アミノ酸からなる蛋白(DMHC1)で、もう一つは一回膜貫通ドメインを持つ778アミノ酸からなる蛋白(DMC1)〓あった。DMC1に間しては、肝癌、肺癌、乳癌を中心をした癌細胞株のcDNAを対象にPCR-SSCP法にて変異検索を行っておりいままでのところ、同義置換を確認している。癌との関連が示唆される既知の遺伝子が含まれていた。JNK3については、そのゲノム構造を決定し、36頭蓋内腫瘍を対象に、integrin β4 subunitに関しては、47乳癌を対象に変異検索を行い、いずれの遺伝子においても新規一塩基多型(SNP)を確認している。また肝癌や肝芽腫にて高頻度にLOHを認める4q21-22領域のESTからも現在新規cDNAをクローニング中である。今後、新規癌関連遺伝子の単離を継続すると共に、今回単離した遺伝子の構造解析や手術検体における変異解析および組み換え蛋白技術や細胞生物学的技術を用いた機能解析より、癌との関係を検討する予定である。
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