研究概要 |
1.転写伸長因子エロンガンAの遺伝子欠損マウスの作製 マウスのエロンガンA染色体遺伝子を単離し、転写活性に必須な領域をコードするエクソンをneo耐性遺伝子で置換したターゲティングベクターを構築した。次いで、ES細胞に導入して薬剤による選別を行ない、相同組換えを起こしたES細胞クローンが3個単離できた。現在キメラマウスの作製を試みている。 2.VHL蛋白-エロンガンBC複合体のユビキチンリガーゼ機能の証明 ヒトVHLと高い相同性を示すショウジョウバエの遺伝子ホモログを単離した。ヒトおよびハエ由来のVHL蛋白は、エロンガンBC複合体と直接結合し、さらにユビキチンリガーゼSCF複合体の構成因子であるCul-2、Rbx1とも結合して、計5つの蛋白から成る複合体を形成した。次に、VHL複合体がSCF複合体と類似した構造を示すため複合体の構成因子を調製して試験管内ユビキチン化アッセイを実施したところ、VHL複合体がSCF同様にユビキチンリガーゼ活性を有することが明らかとなった。さらに、VHL病では血管腫、血管芽腫など血管の豊富な腫瘍を高頻度に発症するため、血管増殖因子の発現を調節しているHIF-1αをその標的分子として想定して解析したところ、ヒトおよびハエVHL蛋白がHIF-1αと直接結合し、VHL複合体が試験管内でHIF-1αをユビキチン化することが明らかとなった。 3.エロンガンAファミリーのメンバーの単離と機能解析 エロンガンAに相同な新規分子エロンガンA2とA3(Aso,T.,et al.未発表)とをクローニングした。ノーザン法による解析の結果、A2が精巣特異的であるのに対して、A3はAと同様に汎組織性の発現を示した。次に、発現精製した蛋白を用いて試験管内転写伸長アッセイを実施したところ、エロンガンA2、A3ともに単独で転写伸長活性を有するが、エロンガンAとは異なりエロンガンBCとの結合による転写伸長活性の促進化を受けないことが判明した。
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