研究概要 |
我々はCDK inhibitorの1つであるp27/kip1を発現したアデノウイルス(以下Adp27)が,各種腫瘍細胞培養株に対してapoptosisを誘導することを報告し,p27/kip1が癌抑制遺伝子類似の機能を有することを提唱してきたが,そのメカニズムは不明のままであった.平成12年度の研究成果として,p27/kip1によるapoptosis誘導のメカニズムの一端をFas/Fas ligand systemの面から解析した. (1)Adp27感染72時間後にTUNEL assayを施行した結果,対象群に対して明らかな右方シフトを示し,Adp27感染によるapoptosis誘導を確認した. (2)Adp27感染前では胆管癌細胞表面にFas発現を認めたがFas ligand発現は認めなかった.一方,p27感染48時間後では明らかなFas ligandの発現を認め,Adp27によるapoptosis誘導にFas pathwayが関与することが示唆された。 (3)コントロールとしてp27と同じCDK inhibitorであるp21をアデノウイルスを用いて細胞内に導入し,同様にフローサイトメトリーにてFas ligandの細胞表面への発現を確認したが,Adp21感染後にはFas ligandの発現は全く認められなかった. (4)Fas ligandの中和抗体であるNOK1を添加しTUNEL assayを施行した.Adp27感染後の添加でもapoptosisがほぼ完全に抑制され,p27/kip1によって誘導されるapoptosisがFas/Fas ligand systemを主要経路とすることが確認された. (5)Western blot,RT-PCRでFas ligand発現誘導を確認したが,Adp27感染後もde novoとしてのFas ligandタンパクやFasL mRNA発現量に変化は認められなかった. 以上より,p27/kip1によるアポトーシス誘導にFas/Fas ligand systemが深く関与していることが明らかとなった.p27/kip1によるFas ligandの細胞表面の発現はde novo Fas ligandの誘導を伴わず,その局在を細胞内から表面へ変化させることでアポトーシスのトリガーとしている可能性が示唆された。
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