研究概要 |
本研究は、哺乳動物細胞に極めて近い細胞内情報伝達系を持つ分裂酵母モデル系を用いて、マップキナーゼ制御機構を分子遺伝学的に解明しようとするものである。細胞形態は,癌細胞の転移における重要な因子の一つである。研究代表者らが発見した新規マップキナーゼPmk1系は,細胞増殖とともに細胞形態形成,特に細胞質分裂において重要であり,カルシニューリンと機能的関連性をもつことがすでに明らかにされている。 本年度は,さらに新たな機能的関連遺伝子を単離するために遺伝学的スクリーニングを行い,ホスファチジル・イノシトール代謝において中心的な役割を果たしているPI4P5キナーゼをコードする遺伝子と細胞膜に存在し細胞外において様々な役割を果たすGPIアンカー蛋白質の合成酵素の一つをコードする遺伝子を得た。生化学的および細胞生物学的解析を行った結果,これらの遺伝子産物はともにマップキナーゼと同様,細胞質分裂においてカルシニューリンと重要な役割をシェアしていることを明らかにした。ヒトに於いても,これらの遺伝子に非常に類似した機能的ホモログが存在しているので,これらの機能的ホモログはヒトマップキナーゼ系の制御機構に深くかかわっている事が示唆された。PI4P5キナーゼはPIP2の産生によりマップキナーゼの上流における制御因子として,一方,GPIアンカー合成酵素は下流における標的因子として,細胞質分裂にかかわっていることが示唆された。
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